法規担当者は、譲らない?

法規担当者の仕事は、所属団体にもよりますが、審査と訟務(法務相談含む。)がメインになります。

団体によっては、両方を兼ねることもあれば、大きい団体になると、その機能が分割されていることもあるでしょう。保守的(むしろ、法制執務に忠実というべきか)な団体であれば、法規担当課と呼ばれ、政策と法務の両方を意識すると、政策法務担当などと呼ばれるかもしれません。

いずれにせよ、これら2つの業務のいずれか又は両方に、法規担当は関わっているわけです。

 

日々の法務相談について、それは法解釈、契約書の規定の整理、損害賠償請求、許可の取消しといった不利益処分に係る相談もあれば、稟議に係る理由付けやそもそも起案の回付についてなど、事務の執行に係る相談もあるでしょう。

 

法規担当者は、当該組織の内外の活動に係る相談について、よく「判断」を求められます。法規の解釈を分掌している以上、法令等の解釈はもちろんのこと、契約書や通知文の読み方なども求められることがあるでしょう。これらの局面において、一定の法制執務の知識とそれぞれの分野に係る情報を担当者から聴きとるなどしつつ、解釈を示すことになります。ここで、法制執務上・法的には、との枕詞をつけて、解釈を示すことになります。丁寧な担当者であれば、及び又はなどの構造をひもとき、相談者にもわかるように、解説することもあるでしょう。

 

このような「判断」とは別領域のもの、つまり、政策領域に係る「判断」を求められるとき、法規担当者はどう対応すべきでしょうか。もちろん、法規担当者の属する組織の事務分掌にもよりますが、法規担当者があくまでも解釈に徹するのであれば、解釈を示し、あとは事業担当課判断で、つまりそれは政策・ビジネスマターですよ、と返すことになるでしょう。

事業担当者が、解釈を求めている場合、判断材料を求めていたり、疑義が生じたところを詰めるという作業をしていることになります。一方、そもそも、生煮えの制度設計を示し、「はて、どうすべきですか、法規担当さん?」と尋ねられる…そういう経験をお持ちの方も少なくないと思われます(むしろ、全ての法規担当者は、多かれ少なかれ、経験しているのではなかろうかと、個人的には感じます。)。

 

法規担当者は悩みます。

法制執務上は、○○とするのがよい。原則は、○○だ。なぜ、わざわざ、そんなことをやりたがるの???

 

一方、事業担当課は、市民、利益団体、内部調整、附属機関等の意見を踏まえ、骨子をまとめていくわけです。まぁ、鶴の一声も往々にしてありますが。

 

ここの隙間において、法規担当者は悩みます。

 

例規等の審査として、関わる以上、体裁や形式的な部分での整理や定義の整理は、避けて通れません。また、できるだけ、厳密さを確保し、「○○等」の「等」について、何が含まれているのか?必ず質問することになるでしょう。定義としての「A、B及びC(以下「A等」という。)」と何らの定義もない「A等」は別物です。

この点について、最低限の法制執務の知識と審査経験があれば、それなりにまとめることはできるでしょう。

 

問題の所在はそこではなく、やはり、制度の中身になります。

 

一足飛びに事業担当者の思考を踏まえると、

1 制度の中身について理解していない

2 作った制度が有する目的とは別の目的が本音にある

3 手段への拘泥(内外からの要望ないし指示)

が法規担当者と事業担当者の隙間にあると考えています。

 

これらを区分して、対応する必要があります。

1について、こちらで理解に努め、例えば国の制度を、法解釈や通知やもって説明し、理解してもらい、現在の実務との違いを理解してもらうことが、共通了解を得る王道ではないでしょうか。

2について、なるほど!と膝を打つようなこともありますが、たいていは…

3について、その手段を取ることがある種の政治的アピールなどになることはありますが、最終的な判断はさておき、目的手段関係を整理して、示しましょう。文章にすることが望ましいです。

 

形式的な審査はそれはそうと説明するとして、内容について、やはり法規担当者と事業担当者の間に、距離はどうしても生じてしまします。

法規担当者は、形式的に詰める中で、内容について整合性が取れていないことがわかれば、詰めていくべきと考えます。その中で、当該例規によってなすことができる範疇を超えていないか、あるいは整合性を取るために、再度定義を検討するなどが必要です。

超えさせてはいけない、かといって書かないのもよくない。いずれにせよ、リスクマネジメントかとは思いますが、全体の整合性をまずもって考え、審査に当たるのが良いのではないかと考えるところです。