令和5年を振り返りつつ、未来への思いを込めて

御無沙汰しております。

 

令和6年を迎え、気持ちを新たにするため、令和5年を振り返りつつ、今後の方針を記載していこうと思います。

 

令和5年は、私事での変化が大きい年でした。

父親の闘病、介護、死去、相続…と初夏から12月まで、仕事に専念できないまま、今年1年が終わったような気がします。人が生きて死ぬということがこれだけ大きなことなのかと、思い知りました。また、喪主を務め、墓を建てるなど、30代では経験しないことをたくさん経験しました。気持ちの上では準備はしていたつもりですが、正直なところ、必死でなにをしたのか、覚えていません。気付いたら年末でした。

 

相続について、法務とは直接関係ありませんが、得た知見を2つ共有します。

  1. 法定相続情報一覧図の作成について
  2. 相続税等の納付について

 

1について、人が死ぬと法的にどうなるか、モノになる…という話ではなくて、人が死んだ後の各種手続についてです。まずは、死亡診断書を書いてもらい死亡届を提出、火葬場での許可を受けるなどなどあります。そのあとは、年金や社会保険についての手続なども引き続き行います。銀行口座を有していることがほとんどであると思いますが、銀行への連絡(そのタイミングはよく考えて行う必要があります。)も必要です。

 

本人であれば、本人確認をして手続を行うわけですが、相続人は当然本人ではなく、また、本人はいない、意思表示ができないわけですので、代理人でもないです。法的効果が帰属する自然人が存在しないからです。相続人という立場で、各種手続に対応することになります。

 

このとき、特に私は父親と苗字が違いますので、お前はだれで、どういう立場なのか?を説明し、また、証明する必要があります。戸籍から通常は親子関係などが分かるわけですから、真っ先にこれを取得する必要があります。これまでは、戸籍を管理している役所に出向き、又は郵送により発行依頼をしてきたわけですが、今後は楽になります。全国で発行が可能になります。少なくとも、戸籍を追う必要があり、場合に応じて、除籍なども必要になります。要は、生まれてから死ぬまでの流れが分かるように、必要な書類全てを入手する必要があります。

 

入手した後は、各手続においてこれを利用することになります。しかしながら、対面でこれを提示し、写しをとっていただくことで終了するものもあれば、原本を郵送し、又は一定期間預かるというものもあります。戸籍証明も無料ではありませんから、たくさんの証明書を入手しようとすると、手数料だけで結構な費用を要します。

 

ここで、良い制度があります。

法定相続情報一覧図です。

これは、被相続人(亡くなった人)と相続人の関係性を示し、法務局が証明をしてくれるというものなのです。認証付きですし、私の経験ですと、これが通用しない手続はありませんでした。なによりも、証明書の発行は無償です!繰り返しますが、無償です!

 

基礎情報となる戸籍の情報を入手し、法務局が用意しているひな形(主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例:法務局)を利用し作成することができます。司法書士などに頼まずとも、情報さえ入手できていれば、すぐにPCで作成することができます。登記になりますので、記載するときの体裁などはお気をつけください。葬式後、まずはこれの作成を優先して行うと、その後の手続がとてもスムーズになります。

 

2について、税について、今回はe-Taxのソフト版を利用し、申告及び納税を行いました。国税庁としてはこれの利用を促進していますし、添付書類なども省略できる傾向にあります。全く分からない人は税理士に頼むのも一つですが、複雑であれば自分でもできます。

が、マイナンバーとの連携やウェブ経由での納税など慣れている人でなければ難しいと思いました。税理士さん向けにはかなり便利な環境が急速に整っていると感じました。

マイナンバーカードを利用して電子署名を付す必要などがありますが、カードリーダーはなくて大丈夫です。最近のスマホはとてもよく出来ていて、カードリーダー代わりになります(不安定ですが)。BluetoothでPCとスマホを接続すれば、カードリーダーになります。

 

結果的には数か月で申告しましたが、何冊も書籍を読み、国税庁の通知通達を読み、根拠法令にも当たるなど、かなりの時間を要しました。自分でできる系の本を読んで、ちんぷんかんぷんということであれば、素直に税理士さんにお願いするのがいいと思います。2度としたくないです。特に不動産がある場合は、素人が手を出すハードルが一気に上がります。

 

ただ、(準)確定申告については、シンプルで分かりやすいなと思いました。今後、確定申告は行うかもしれませんので、良い勉強になりました。

 

お金の計算は、エクセルやソフトなどを利用してしっかり管理するのが重要ですね。

 

相続においては、手続をたくさんしましたが、物理的な荷物などの片付けも何日もかけて行いました。正直、見たくないものもたくさんありましたが、正面から受け入れて、少しずつ浄化しているところです。

 

また、並行して、我が家に新生児がやってきましたので、相続と育児を同時にやっていました。不幸中の幸いというか、育休に入る前から休みを取って相続の手続や片付けをずっとやってました。今は育児に全振りです。

 

10月初頭から1月半ばまで、あまり長くはない期間と思いますが、あと2週間程度で仕事復帰になります。ですが、時短をする予定ですので、しばらく、法務としては半人前が半人前仕事をやる可能性が高いです。

 

今年は、去年からですが、家族や家庭のことをやるのがメインになると思います。それもあって、なかなかリスク行動をとることは難しいですし、そもそもそういうことをする必要はないのかもしれません。

 

ただ、人生をよくするため、豊かにするため、マイナスを減らすため、できる行動をやるべきで、しっかり判断すべきと考えています。まだまだ悩んでいます。

 

大枠としては、今年は、今までの経験をしっかり体系的な知識に落とし込んでいくことに注力したいと思っています。こつこつと法律の知識を身につけていく。コツコツやることが大事だと痛感しています。何がどうなるかわかりませんが、気になったことは放置せず、しっかり学ぶ。一歩一歩頑張ります。

 

令和5年に経験したこと、特にそこで感じたことを言語化すること、そもそも思い出すことも、言葉に詰まる瞬間が少なくありません。一方で、そういう状況でも助けてくれる人たち、お話ししてくれる人たちがいて、感謝しかありません。

 

この社会の豊かさにもっと寄与できないか、次世代のために何ができるのか、自分が満足して死ぬためにこれから何をしていけばいいのか、まだまだ悩んでいます。

 

しかし、軽率でもいいしやってみる、経験してみる、そういうことが大事です。

どんどん前に進んで、試行錯誤して、いい方向を見出せればと思います。

 

令和6年も荒波かもしれませんが、ときに波に乗り、ときに流されつつ、細く長くやっていこうと思います。

 

令和6年もどうぞよろしくお願いいたします。

16分音符の響き~チャカチャカチャカチャカ~

こんばんは。

 

早いもので6月です。今年も紫陽花の季節だなと、お散歩していると思います。ということは、もうそろそろ夏も本格化。夏バテを乗り切らねばなりません。

 

さて、みなさんはこの動画を知っていますか?

Watch THE D SORAKI killing the BEAT at World Final 💪 - YouTube

レッドブルが主催しているダンス大会の優勝者の動画です。

何人かが同じフリをしているわけでもなく、無理に惹きつけようとするものでもなく、曲に合わせて感情やエネルギーがダンスとして表現されているように思えます。

 

彼は、インタビューの中でこう語っています。

「27歳でスーパーボウル」19歳の世界王者“THE D SoraKi”のダンス哲学「アーティストと同じ地位になった時に自分は死ねる」 - 他競技 - Number Web - ナンバー (bunshun.jp)

 

「音楽がかかってたら、体を揺らしたりリズムに乗るじゃないすか。それだけでダンスです!踊ってます!ってみんなに伝えたいですね」

 

裾野の広さと、受け入れる広さ。

彼のダンスから、彼のフィールを感じられるのには、こういう考えがもとにあるんだろうなと思います。もちろん、素人の私にはわからないような技術やスキルはあるでしょう。

 

さて、彼はこのように言っています。

「こうやってトゥッ、トゥッ、トゥッって動かすのを毎日頑張って続けて、関節の動きを脳の中に入れていく。そうすれば誰でもできますよ」

誰でもなのかは分からないが、少なくとも上達する人は毎日、丁寧に基礎を反復して、いつでもどこでも、それを再現できるようにしている。これこそがプロフェッショナルの在り方だろう。

 

さてさて、彼のパッション溢れるダンスは、素晴らしい名曲、それもドラムの素晴らしい演奏に合わせてなされている。

この曲は、ダイアナ・ロスのI'm Coming outという曲です。

I'm Coming Out - YouTube

 

Chicのメンバー(ナイル・ロジャース、バーナード・エドワーズ、そして、トニー・トンプソン)が参加し、ロジャースとエドワーズがプロデュースを行っている。

ナイル・ロジャーズは数多くのプロデュースを行っている。

有名どころだけでも数えきれないが、差し当たりこの二つを挙げておこう。

Madonna - Like A Virgin (Official Video) - YouTube

Daft Punk - Get Lucky (Official Audio) ft. Pharrell Williams, Nile Rodgers - YouTube

 

さて、先のドラムはトニー・トンプソンによるものだ。曲名を踏まえてか、どうのかは分からないが、単なる16ビートってことはなく、心が開けていくような、この後どのような展開が来るのだろうかと思わせるような、変則的な展開。チャカチャカチャカチャカ…

 

僕はこのチャカチャカが大好きなのだ。

16分音符が彩るカッティングが大好きなのだ。

 

変則的なドラムの後ろでじみーにチャカチャカチャカチャカ。対照的に、同じようなカッティングを…本当だろうか?

 

ギターの花形というと、ギターソロや印象的なイントロかもしれない。歪ませたギターにキュイーンとチョーキングロングトーン。うむ、それはそれでよい。

 

でも、違うのだ。かっこいいのはそれだけじゃない。

カッティングなのだ。

あの、チャカチャカチャカチャカやってるカッティングの奥はとんでもなく深いのだ。

 

ナイル・ロジャーズは、ソロをキュイーンとやるタイプのギタリストではない。むしろ、ベースのバーナード・エドワーズのベースはベチンベチンと、ベースソロもかっこいいのだ。

でも、いつまでも聴いていたくなる、それが彼のカッティングなのだ。

 

よく聞いてみてほしい。すこーしずつ、16分音符の振り方が異なっているのだ。

16分を正確に聞き分けるのは私は正直できていないのだが、辛抱強く聴き分けてみると、お、ここは少し音が足されているな、音の強弱がさっきと違う、ゴーストノートの振り方が違うなどなど。

 

演奏してみると、彼と全く同じ演奏をすることがいかに難しいか、よく分かる。正確な譜面を手に入れることが大事であるが、それ以上に、フィーリングなのだ。

ロックンロールはダンスミュージックであることを思い出すのだ。ディスコで踊るのだ。

 

チャカチャカチャカチャカ…カラダから溢れるリズムをギターにのせて、チャカチャカチャカチャカ。今日も僕は地味なそれをチャカチャカチャカチャカ。多くの人はそんな違いに気付かないだろう。その違いを出すことによる印象をなんとなーく感じるくらいなのだ。それがプロの技だ。

 

ゆっくりやってみる、一つ一つ丁寧にやってみる…

だから、基礎が固められ、通常の速度でも、それ以上の速度でも、再現でき、応用できるのだ。

 

カッティングはフィーリングじゃない。丁寧な譜割と、リズム感、これらを踏まえて、展開していく面白さがある。でも、最後は、技術を踏まえて、フィーリングやセンスを踏まえて、展開していく。ノレるのだ。あなたの心の声が、チャカチャカを通して、私に響くのだ。私もまた踊りだす…

 

得てして、心の声などを直接聞こうとすると、どろどろとしたものを見て、どうしようもないと、さじを投げてしまうものだ。

あなたの心の声が、表現するものを見てみよう。そのかたちから、心の声の影を見てみる。

それが全てだ。

 

今宵も、チャッチャカチャッチャカ。私の心の声はあなたに届くだろうか。あなたの心も踊りだしてしまうだろうか

 

以上

 

距離感を感じる

こんにちは。まっちゃです。

 

来年度においても、法規担当者として任を全うする予定です。

全うできているかはいまだに分かりません。

 

前回は事業理解として行政活動の目的と手段としての一説明を試みたところ、今回は行政活動における法規担当者の役割、関わり方等について考えてみたいと思います。

 

考えるに当たり、簡単なメモとして公開して、その後ブラッシュアップをします。

ブラッシュアップのため、令和5年3月25日(土)午前10時ごろから、twitterのスペース上でお話しするとともに、スピーカーさんがいらっしゃれば、ディスカッションをしたいと考えています。

 

無闇に論点を拡散させると焦点がぼやけますので、距離感をキーワードに3つに絞ります。

1 現実の在り様と行政における無謬主義

2 行政活動と法律による行政の原理の距離感

3 事務事業及びその担当者と法規担当者との距離感

 

1 現実の在り様と行政における無謬主義

行政主体は、行政機関を有し、補助機関をして、様々な活動を行っています。行政活動は、それが正しく、効果的に、効率的に執行されるならば、その目的が妥当である限り、社会の公益を増進させ、又はその低下を防ぐことになるでしょう。少なくとも、立法者や施策執行者はそのように考えて、執行しています。本当でしょうか?

 

個別の補助機関がどのような内心を有しているかはともかく、そういう建前になっています。また、大義名分があれば、あるいは、国民市民の支持があれば、行政はそれを無視することはできません。統治主体としての行政は、説明責任を果たさなくてはなりません。

 

しかしながら、建前を、大義名分を、世論を踏まえて、執行されているでしょうか?説明責任は、客観的に果たされていると言えるでしょうか?

 

多くの方が、否と答えるのではないでしょうか。

もちろん、補助機関として勤務している者は、そうは言わないでしょう。

 

この距離感は何でしょうか?

 

現実の行政の態様と行政機関が建前として述べる行政の在り方には常に距離があります。もちろん、ほとんどの行政活動は適法かつ効果的に行われています(と私は信じているわけです。)。一方で、そうではないものは、特に目立ちますし、世論の批判の対象になります。世論が反応しなくても、私人や事業者が行政機関と向かい合うときにも、同様ことは生じます。なぜか。

 

行政が権力を有しているなどの原因も考えられますし、部分的にはそうです。

今回は、行政の無謬主義に注目します。

 

行政がやっていることは正しいか?間違っていないか?と考えることは当然できます。一方、行政がやることは間違えない・間違えるはずがない・間違えるはずがない、という大前提(無謬主義)があります。

司法判断を考えると、行政裁量の範疇かどうかを検討することが多いですが、この裁量の範疇かどうかで守り切れるか?を、法規担当者としては最終的には考えます。

 

一度決定したことは、間違っていてはいけません。決定したから、正しいのです。手続的に、形式的に、正しいのです。そうです、正しいのです。

 

ここに論理の飛躍があります。手続的制約は、違法・不適当な判断を避けるために設けられ、正しい意思決定を支えるものではありますが、内容的な正しさ、実質的な正しさを担保するものではないことは、読者の方はよく理解していると思います。

 

また、形式的な間違いがあれば、例えば不利益処分に係る不十分な理由付記がありますが、やり直せばよいのです。瑕疵を治癒すればよいのです。観念的な瑕疵をなくせばよいのです。

 

行政は間違えることはできません。権利を擁護し、及び不当な義務を課さない主体である必要があるからです。ただ、それは、行政が正しいことを、担保するものではなく、むしろ、行政は間違え、違法・不当な行政活動を行い、作為も不作為も行う、不完全なものです。行政観として、間違えてはいけないもの(理想)でありつつも、間違えるものだ(事実)というのが、バランスの良い見方ではないでしょうか。

 

もちろん、行政の安定性も重要です。公定力などがそうですが、行政が不安定であれな、行政への信頼を損ないます。国民市民が行政に対する予測可能性を失うことになりかねません。この間のバランスをこそ、先の行政観をもって、内部の人間は重視するべきであると、私は考えています。

 

2 行政活動と法律による行政の原理の距離感

行政活動は目的を有しています。その目的のため、事業や施策を行政は展開しています。これらを担うのは、事業所管部署です。当該事業所管部署が、この社会に存在する諸問題のうち、行政が解決すべき問題を抽出し、又はその解決を委ねられ、問題解決のための事業又は施策を展開します。ここにおいて、行政は、当該目的もこれを達成する手段についても、法律による行政の原理を踏まえて、政策を立案し、執行していかねばなりません。

 

換言すると、憲法、法令等に違反しないように、目的を措定し、活動を行わねばなりません。ここにおいて、そもそもその活動の根拠が規定されているのか、事実的行為か法的行為なのかなどをしっかり押さえておかねばなりません。この点について、前回の記事において説明を行いました。

 

しかし、前項で述べたように、行政は完全無欠とはいえません。むしろ、常に不完全です。全ての社会問題を解決する打ち出の小槌がないように、行政主体が抱える問題を解決するマジックアイテムもありません。

 

かつて、トマス・ホッブスは国家権力をリヴァイアサンに喩えたわけですが、統治主体である行政は憲法を含めた法律の縛りがなければ、暴れまわってしまうでしょう。

 

執行機関は、場合によっては人の財産を侵害し、生活を変えてしまう可能性のある活動を行っています。権力を、恣意的に使うことは、不可能ではありません。統治のため、という大義名分の下に、何をするかわからないのが行政です。だから、法律に縛られるわけですが、縛られた行政主体は一定の制約の下、自由(裁量)をもってその目的を果たす優等生でしょうか、縛られたまま虎視眈々と暴れることを狙う怪物でしょうか。

 

3 事務事業及びその担当者と法規担当者との距離感

では、これらをだれが考えるのか?というと、当然、事業所管部署です。

事業所管部署の担当者は、事業や施策の実施に当たり、法規担当者に相談することがあります。

よく相談があるのは、次の3つです。

⑴ 事業や施策の根拠規定の解釈

⑵ 条例や補助金交付要綱などの制度設計

⑶ 契約書、覚書などのリーガルチェック

 

法規担当者は、法令等を踏まえ、これらに当たります。

目的が妥当であり、施策との合理的な連関があれば、事業スキームの構築のため、法的な側面からリスクを検討し、それを最小限にできるよう、アドバイスをします。

 

一方、法的に問題がある事柄について、言うべきことを言うこともその職責です。

事業所管部署に対して、正面から対立することもあれば、よりリスクの低い案、法的問題が生じにくい案に誘導することもあります。また、そもそも、リスクを認識していない事業所管部署に対して、これを自覚するように伝えることもあります。

 

当然ですが、法制部門は、事業所管部署ではありません。その執行には一切の責任を持ちません。だからこそ、正論を、筋の通った意見を、臆せず言わねばなりません。言うことができるわけです。

 

法制部門が、事業所管部署と一緒になって施策を進めるのであれば併走することが理想と考えます。ランナーのよき伴走者たることで、進むべきときに進むことができることを伝え、止まるべきときにその旨を即座に伝えることができるからです。また、初期から法的な土台を組んでおけば、そうそう崩れることもありません。

 

執行の責任を、法制部門が負うのであれば、この限りではありません。

 

距離感について考えました。

随時、リバイズしていきます。

 

以上

事業理解と自治体法務

こんにちは。まっちゃです。

 

先日、次のスペースが開催されました。

諸事情により前半を聴くことができなかったのですが、当該スペースを受けて(私の知る限り)いくつかの素晴らしいエントリが投稿されました。

 

さゆりさん(@sayurishsd

なぜ事業理解に対してムキになるのか|Sayurishsd|note

事業理解を深めるために、皆さんどうなさってますか|Sayurishsd|note

 

おもち先生(@omochihoumu

「法務と事業理解の話」|おもち|note

 

dtk先生(@dtk1970

事業を理解する、とは - dtk's blog(71B) (hatenablog.com)

 

ちくわ先生(@gigakame

【法務】一法務担当者の私が事業理解と法務相談について考えること - ホップ・ステップ・法務! (hatenablog.com)

 

いずれも良記事ですので、企業法務における事業理解(の重要性や視点)にご興味ある方は、ぜひご覧ください。

 

わたしの理解では、事業理解を深めていくことで、事業部との信頼が増していき、組織としての、また、法務自体のパフォーマンスも向上する、ということがコアの部分かと思います。浅い理解かもしれません。

 

さて、餅は餅屋ということで、私は自治体法務のことを少しお話しします。

 

自治体法務においては、ここでいう「事業」を、広く・狭く両方の意味で解することが重要です。通常は、政策目的とそれを実現するための手段としての事業ないし施策の関係です。もちろん、目的(行政目的)と事業(企業法務におけるそれ)はパラレルではないので、一番留意すべきところはこの点と思っています。

 

というのも、企業法務ないし企業活動においては利潤追求が重要であるところ、自治体法務ないし行政活動においては公益の増進・権利義務の擁護が重要です。両者に共通する点としては、当然と言えば当然ですが、活動に際して、当該活動に係る法的リスクを低減させるという点があげられるでしょう。

 

自治体法務、自治体における法規担当の狭義の業務であり、また、コア業務は例規とうに係る規程整備です。例えば、個人情報保護法の改正により、地方公共団体保有する個人情報に係る開示請求等の根拠は、令和5年4月1日から、各団体が整備している条例から、同法となります。これに際して、各団体においては、現在、既存条例の廃止及び法施行条例等の整備を行った(行っているところ)です。

 

個人情報保護法について、データの利活用もその目的とするところ、その利活用の主体は行政というよりも民間事業者を想定していると思われます。ここでいう事業は、団体における個人情報の保護を万全にすることであり、対国民・市民との関係では、法の規定を踏まえ、必要な範囲でそのプライバシーの保護・知る権利に資するように、開示すべき部分を開示し、そうでないものを開示しないという事務・行政を行うことが重要です。

 

また、こちらは情報公開に係るものですが、国民・市民にとって、公文書は統治主体に保存されている財産です。意思決定を知るための財産です。なぜ、どのように、いつ、何が決定されたのか、文書として保存し、管理し、及び整理しておくこともまた、とても重要です。これらは、国民・市民の権利擁護につながります。(情報公開も、いつかは法定されるのでしょうか…?)

 

一方、個人情報保護・情報公開のようなものと異なり、より直接にハード・ソフト面から、目に見える公益の増進を目的とする施策・事業も展開されます。わかりやすいものとして、黒澤明監督の「生きる」を例に引くと、とある地方の役人が、地元住民の要望を踏まえて、公園を設置しようとするわけです。公園の設置により、子どもの遊び場ができ、子ども同士が交流できます。また、路上で遊んでいれば、交通事故のリスクもありますので、これも低減させることができるかもしれません。最近であれば、企業誘致やスタートアップ企業の誘致なども、ここでいう事業に近いかも知れません。

 

話が長くなりましたが、事業理解の話に戻ります。

政策目的のために事業・施策を実施するわけですが、当然、法規担当者ではなく、当該施策を所管する部署があります。市民、政治家、首長からの要望を踏まえ、担当課は政策を立案し、実行します。また、法定受託事務など、一定の定められたルールに従って粛々と行うべき事務もあります。まずもって、それは、当該団体における独自施策なのか、法定のものであるのか、これを区別すべきでしょう。法規制があるものであっても、いわゆる上乗せ・横出し規制というものがあります。これらに係る議論する段において、これらが独自施策であることを理解しなければ、円滑な議論はなされないでしょう。

 

分かりやすさのために、独自施策に限って、話を進めていきます。

これについても、二つの可能性があります。現になされている施策かこれからなそうとしている・立案しようとしている施策なのか、です。通常、事業理解というときは前者になります。分けて考えます。

 

実行中の施策について、注目すべき点の一部は、先に述べたとおりです。法規担当者は、これについて、どのような点に注意して担当課と相対すべきか。それなりに詰められた施策であれば、その行政目的や事業展開については、一定詰められています。また、行政活動については、根拠が求められます(法律による行政の原理)。まずもって確認すべきは、根拠規定です。法?条例?国の通知?総合計画?まずはこれを確認しましょう。また、思いこまず、再度、条文を読み直しましょう。担当者が条文を読まず、該当規定の解釈を行うことで、当該施策に係る懸念点が払拭されることもあります。

 

次に、相談者の意図を確認しましょう。相談中に必ず確認しなければならないのは、相談者が何をしたいのか、です。あるいは、なぜ法規担当者に相談しに来たのか。例えば施策の実践中に想定外の事態が起こったのか、施策の制度体系に修正を加えようとしているのか、新任の方が施策の矛盾点を見つけてこれでいいのか確認したり。また、外在的には、誰の指示で、何を確認しようとしているのかなど、早期に確認しておくことで、ボタンの掛け違いも防げます。後者については、担当者をメッセンジャーに仕立て上げることも重要です。

 

後者の問題に絞ります。

誰が確認させているのか?部局長が何らかの指示を出して、それを聞いた所属長が、担当者に確認させているのか、担当係長なのかどうかなど。いずれにせよ、担当者自身が事業を理解していても、その相談内容を理解していない時があります。また、担当者自身が事業をよく理解していないこともしばしばあります。担当者の説明を鵜呑みにしないことは、上記のエントリでも触れられています。この点、後述します。

 

誰が何を確認したがっているのか、例えば「部長がこの件は法規担当者に聞いてこいと言ってきたので…」など、相談者が言うことがあります。この点、素直に答えない相談者には、相談を打ち切ってもよいと、個人的には思っています。開示されている情報が全てではないのであれば、そのおそれがあるなら、法規担当としては回答しかねると、言い切っていいでしょう。それくらい、重要な論点と考えます。

 

部長は何を懸念しているのでしょうか?ことあるごとに、弁護士や法規担当に確認したいという属性の方もいます。この場合、法規担当協議済み(回答はしてない。)というケースも往々に発生する可能性もあります。一方、言語化はできないけれど、何かおかしい気がする。法規担当ならそれを理解して、指摘し、改善をしてくれるだろうと期待している部長もいるでしょう。いずれにせよ、相談者の奥にいる本当の相談者を意識して言葉を紡ぐことも重要です。

 

先ほどの論点に戻ります。

相談者の開示した情報だけを鵜呑みにしない。例えば相談者の示す根拠規定が改正前のものかもしれません。一部分の抜粋かもしれません。何らかの意図をもって、情報を全部開示しないこともあります。ゆえに、法規担当者は、ヒアリング等において、自ら論点を抽出し、論点ごとに議論を組み立てなおし、それを相談者に示した上で、必要な情報を求めるべきでしょう。あるいは、論点を示す前に、まずは情報を開示することを求めてもよいでしょう。並行して、国などの通知通達等、法令・判例、逐条解説などを用いて、自ら裏どりをしていきます。この作業を厭うべきではないでしょう。いわゆる、リーガルリサーチですが、法解釈にとどまらず、事実レベルであっても、確認できる範囲で、独自に調査すべきです。相談者の意図にかかわらず、間違った情報が混入する可能性もあります。もちろん、登記情報などは相談者にその入手を依頼してよいでしょう。

 

新規施策について述べます。

新規案件について、ベテラン職員であれば、ある目的を達成するためには、このような施策が有効だろうと、直感的に立案できることもあります。このような相談を受けたとき、アイディアを法的な側面から固めていく支援を行うことが多いでしょう。全体の枠組みさえ組み立てられれば、流れていくでしょう。また、部分的に、有効と思われる方法が採用できるかの相談もあり得ます。スポット的に関わることもあります。例えば補助金の申請について、なんとか書類の往復回数を減らすために、事業の内容に照らしてですが、補助事業を実施した後に申請兼請求書をもらうことなどが考えられます。この場合、補助事業の実施後でよいのか、検討することになります。

 

一方、施策目的とその手段としての施策がうまく連関していないこともあります。政治的な壁や政治を踏まえた指示があるのは常ですが、まずは合理的な考えをもって、枠組みをもって、限界を示しておくことも重要です。結論ありきで担当課は突っ走ります。それでも、というのが法規担当の仕事です。落としどころを見極めつつ、正論を早々に譲ってはいけません。エライ人に呼び出されて、詰められても、ひるんではいけません。敵対的か信頼関係が構築できているかにもよりますが、議論があるからこそ、よい施策になることも、ままあります。議論を恐れず、見下すことをせず、なぜ、そのような制度設計にしようとしているのか、冷静に観察し、判断しましょう。

 

最後に。

縷々述べたところですが、企業法務における「事業」と違って、自治体においては、施策の事務の担当をたった一人の職員が行うことも、少なくありません。そして、小規模のものや決まりきったことを事務手続にのせていくだけのものもあります。規制行政や福祉制度についても、関連分野のスキームと似ているものも多く、一つのことを知ると、類似法体系の行政法や業法についても理解が進むことも多いです。ただし、税ではこうだから、契約に係る債権債務も時効は5年であるはずだみたいな、知っていることしか知らない職員もいます。都度都度、法規担当者が体系を示すことも必要かもしれません、そこまで面倒見れませんというのが正直なところですが。説明責任と同じです。説明すること、説明をまとめておくことを厭わず、とりあえずは伝えましょう。その奥にいる人には、伝わることも少なくないです。

 

わたしとしては、事業を理解するために、それに関わっている人についても知ることが重要だと考えています。それは、内外にいる政治アクターとして整理されるでしょう。誰が、権力を握っているか、政治学的な観点からの分析も、政策分析とは別の視点として、重要です。

 

単に法解釈ができるだけでは、少なくとも新規施策を担当課と併走して作り上げていくことは難しいでしょう。法的な分析に加えて、政治的な分析、政策的な分析なども重要です。繰り返しになりますが、当該施策が、何を目的として、どのようなことを達成しようとしてるのか、その手段は何か?(補助金?規制?情報提供?など)子のフレームワークを常に意識をして、ヒアリングし、自らの言葉で論点を再構築することが重要です。

 

事業理解という言葉から、行政が実施する施策へと少し飛躍をして整理をしてみました。

自治体法務の一活動に過ぎませんが、参考になれば幸いです。

 

今後、自治体においては、人材確保に負ける(労働環境もよくなく、賃金もよくない)、更なる人員の減少(仕事は増え、人員は増えない)が予想されます。これに伴って、ベテラン職員も減り、一人の職員の業務量も増えます。事務処理のミス、単純なミスが増える可能性もあります。法規担当としては、施策の推進に当たり、施策実施段階における、各種リスクの低減のため、事務執行の面倒も見なければならないかもしれません。私の懸念です。

 

以上

称賛するなら金をくれ~法規担当者による研修実施~

みなさん、こんにちは。

 

前回の記事の投稿から4か月ほど経過しましたが、相変わらず法規担当者をやっています。最広義の法務(条文を読むとか、事業部の相談に回答するなど)の意味で、引き続き法務担当をやっています。事務員ですので、特別送達も自分で開封するのですが、毎回緊張します。

 

さて、お金が欲しいお金が欲しいと叫んでいたら、あれやこれやの臨時収入を得ました(もちろん、副業的なものではなく、保険金の支払とか年末調整とか)。生活のために働いているので、お金が増えることは良きことです。車買いました。

 

本題です。本代はとてもかかりました。

夏の終わりごろ、新規採用職員向けに公用文の書き方及び行政法(行政救済法を除く。)について一日、研修担当所属から依頼があったため、研修を行いました。前者については3回目、後者については初めて担当する機会を得ました。

幸いなことに、夏ごろは繁忙期も終わっており、ほぼ毎日のように研修準備に時間を費やすことができたので、学習時間を確保するとともに、大幅な研修資料の改訂ができました。

 

わたしが依頼されたミッションは、「公的な文章とは何ぞや」というイメージとその技術を教授すること。例えば「!」は公用文として適切か?どのような場面で用いるべきかなど。そして、職員として知っておくべき法的知識の教授。法律による行政の原理を代表とする基本原理を解説すること。

 

それとは別に、わたしが掲げていたミッションは次の三つ

1 とりあえず法規部門担当者の雰囲気を知る。 

  → 相談しやすくする。

2 文章の型を身に付ける。

  → 全員分、事前課題を添削しました。3連休がつぶれました。

3 仕事の根幹を知る。

  → 例えば前例踏襲をするにしても、その都度の検討を忘れない。その仕事の根拠法は何か?

 

1について、法規担当者に相談することができる…そういうことすら仕事で詰まったときに選択肢に出てこないかもしれません。上司は流していても、法的に再検討は重要ってことも少なくない。よく考えてみると、不要なステップが見つかったり。ひとりで仕事を抱え込まないということも大事。新人だからこそ。

もちろん、こんな連中に相談したないわ!と思う人も一定数はいるだろう。ただ、必要な場面で相談する・しなければならないということがある(例えば条例改正・訴訟関係)ということを知ってほしい。

例えば今後、相談に来てくれた時、「これ、研修の時やったよね?覚えてるかな?」と、声かけたりする。そういう指摘があったから、覚えているなんてこともある(忘れる人と嫌がる人がほとんどかもしれないが…)。少なくとも、覚えるべきことは覚える、もっと学びたい人には、刺さるかもしれない。地道にコツコツ

 

2について、100人程度の職員に対して、事前課題を出した。自分の業務について説明してください。根拠条文を示してください、と。3行程度記載する人から、数ページにわたる大作もあった。その全てに目を通し、公用文として通用するものに添削した(ワードの校閲機能を使い、全員にコメントを付し、メールで返却)。私自身、まさに100本ノックで、自分がどのような書き方をどのように直すかの癖も相対化することができた。研修をやると、研修担当が一番勉強になるのだ。

良くあるミスは、公用文としては(私が公私問わず説いている)「手続」が正しい。「仕組み」がただしい。このような送り仮名のミス。もうひとつが、文章として成立しているかどうか、あるいは、語順。

「いつ、どこで、だれが、なにを、どうした」

この語順に気を付けるだけで、文章は格段に読みやすくなる。

「私は、○○業務を担当している。」

「私が担当している業務は、○○である。」

とするのが正しい。

法律番号について、ヒントを出しているにもかかわらず、そのヒントを踏まえない回答がほとんどであった。

地方自治法(昭和22年法律第67号)」が正しく「自治法」でもなく、「自治法(昭和22年法律)」でもなく、「自治法1条」でもないのだ。根拠条文を示してくださいという設問であるから、根拠となる条文を示さなくてはならない。

この点について、しっかり解説したので、今後はどの法律喉の条文が根拠となっているか?都度調べてくれる…と期待している。

と少しきついことも言ったが、この際、多くの職員が、改めて条文を読んでくれたはずである。それでいいんです。それでいいんです。ここからスタートなので。

 

3について、根拠条文については、先に触れたとおり。我々は法治国家で生活し、生きている。憲法が我々に授権しているものと、禁止しているものを理解すること。それが大事。少なくとも、全ての建前は、公共の福祉の増進にあり、常にその目的のために仕事が構成されるように、意識すること。特に我々に課された義務として、法律による行政の原理を徹底的に体に叩き込むこと。説明が成功したかはわからないが、今後は、あの時教授しましたね?との前提で、何度もそこをスタート地点にして相談等に応じる。

 

3年目ということもあり、時間配分は感覚的につかめてきたので、余裕をもって進めることができた。行政法については座学的な要素が多いので、一方的に話すのはほどほどに、職員同士で議論ができる時間を多めに確保した。交流も大事です。同期ですから。

 

目の前の仕事を捌くだけなら、誰でも3年やればそれなりにできるようになる。一つ一つの要素に分解して、読み書きができて、論理的思考が一定程度できるなら、難しい、ということはない。もちろん、調整はその限りでない…

重要なのは、仕事の根拠やその目的を意識して、どの手段が最も効果的であり、有用であり、その手段を実現するためにどのような手続を踏めばよいのか?これを常に考えること。そのための根拠が法であり、法的思考が有用であること。前者については教えることができたが、後者については発展的であり、新規採用職員に対しては高度と思う。管理職向けにやりたいが、なかなかそのような機会はない。いつかやってみたい。

 

研修資料は、各課において復命書に添付され、回覧される。何人かの方から、広く公開してみてはとのご意見もいただいた。嬉しい限り。その予定はないが、公開できる機会があれば、もっとブラッシュアップしてから。来年度もブラッシュアップを、引き続きやってみます。

 

最後に。研修後、研修担当のえらい人から、数十万の委託くらいの価値がある!との言をいただいたので、ぜひ特別手当として支給してくださいと冗談を返しておいた(もちろん本気である。)。研修の内製化が課題らしく、社内での研修担当としてのキャリアを歩みつつある…(資料は作るのが大変なので、安請け合いはしない…)

 

余談

当然、手当はないので、赤字である(?)。書籍代は必要だし、プライベートに読書時間を要する。採点も手間暇かけている。大赤字である(?)。

一方、得るものも多かった。確実に説明できる内容を教える。わからないところは言語化できるまで考え、言語化する。そして、読まなければならない本を読む…圧を掛ける圧を掛ける。私が学んだことこそ財産であり、きっと黒字だ(?)。

課題も多い。行政救済法は触れることができなかった。国賠や取消しに係る訴訟がどんなものか理解すると、法的リスクへの具体的なイメージがつかみやすい。来年は行政救済法を教える予定。また、行政手続法について、具体例があまりにも少なかった。時間も余ってしまった。職種が多様であるから、あえて省いたところもあるが、来年は具体例を充実させたい。また、公用文の自分の癖があることに気付いた。まだこの点について、自覚できていないし、類型化もできていないが、いい意味での無色の公用文を目指していきたい。もっと範囲を増やすなら、契約事務のあれこれを丁寧に教えたいところ。

 

職員が学んでくれると嬉しいし、何かの役に立てればそれでよいと思っている。この企図が成功しているか、今は判断すべき時にはない。精進します。

法規担当者の悩みどころ(随時更新)

法規担当者が悩みがちなところを、思いつくままに挙げてみる。個人的な悩みに過ぎないのかもしれない(随時継ぎ足していく予定)。

 

1 異動直後から、見解を求められる。

狙い撃ちやら、力量を測るのはもう少し後にしてほしい。すぐに上司に相談すべし。抱え込まない方がよい。

 

2 自分が知らないだけなのか、とんでもな相談なのかの判断がつかない。

え、そんなルールあったっけ…?いや、なんかおかしい気がする…うーん???

大体後者。経験を積んだ後の自分の感覚はある程度当てにしていい。気になる論点等があれば、すぐに周囲に相談した方がよい。

 

3 いきなり話しかけられる。

自分に余裕がなければ、一度お引き取りいただいてよい。アポを取らない方が悪い。その際、資料だけはもらっておくこと。メールで送ってもらってもよい。受ける場合でも、粘着質なタイプであれば、嫌そうな顔(ムーブ)はしておく方がよいかもしれない。相談がないと心配になるが、そういうタイプは粘着してくるので、いずれやってくる、心配は不要

 

4 原案が上がってこない。

原案がないと審査できません。ひどいときはこちらで作りますよ…上から目線で来るのだけはやめて…個性は受け入れるから、やってもらって当たり前だと思わないで…

場合によっては、こちらで先に根回ししておく方がよい案件も。過保護かもしれない

(たぶん、過保護は少数派だと思う。)。

 

5 官報が積み上がる。

官報が積み上がる。定期的に処分しましょう、崩れないうちに…

 

 

 

また随時足していきます。

満足度の高い法務相談ー回答編ー

法務担当に相談する者の満足度を上げる方法は2つある。

ひとつは、相手の意向に沿った回答をすることである。当然、それがリーガルな筋道を立てて思考したものでなく、故意にそのような回答を量産するようであれば、直ちに異動願を出すべきであろう。

ふたつに、質問されたことにできるだけ早く回答することである。これには2つの要素があって、できるだけ早いこと、そして、そもそも質問されたことに応答することである。Aは違法か?Aは違法である・ない、と答えることである。この解答には、現時点ではAが違法かどうかは裁判をやってみないとわからないと結論付けることも含まれる。

 

法務に相談する動機や理由は複雑で多様であると思う。そのなかでも、筋道立てて考えられる人たちに頼りにされる回答として、私が重要視していることがある。

それは、上記に加え、相手の直観を踏まえ回答し、プラスアルファの情報や論点を示すことである。

例えば、相談者がAは法的に差し支えないかと質問した場合、事実を整理した上で、考えてらっしゃるとおり○○であることを踏まえると、差し支えないものといえます、など一言添える。もちろん、主張に該当する部分や結論がずれている場合もある。この場合は、さきほどおっしゃっていた○○という事実が重要であり、当該事実を踏まえ、○○法の規定を踏まえると、Aは法的に問題があると言わざるを得ないですね、など。

 

これらの発言の後、相手方とのやり取りが一巡し、納得乃至理解していただき、その後、余談ですがと切り出す。例えば、Aであれば難しいが、Bという方法であれば問題ないと考える、事業対象を再考してはどうかなど。あるいは、先日Xという事例があり、その場合は問題ないとした、これを参考としてはどうかなど申し添える。他のバリエーションとして、上の判断としてαを重要視しているならば、むしろβという案もあるが、こちらについては検討してみてはいかがか、など。できる範囲で情報乃至論点を申し添える。

 

できる職員は良質の情報を持っていることも多い。会社内に味方が多いに越したことはないと思うがいかがだろうか。また、頼りにされるということは、頼りにできるということでもある(そういう職員に限るわけだが。)。キーパーソンに頼るだけではなく、キーパーソンに頼られる法務担当を目指していきたいところ。