称賛するなら金をくれ~法規担当者による研修実施~

みなさん、こんにちは。

 

前回の記事の投稿から4か月ほど経過しましたが、相変わらず法規担当者をやっています。最広義の法務(条文を読むとか、事業部の相談に回答するなど)の意味で、引き続き法務担当をやっています。事務員ですので、特別送達も自分で開封するのですが、毎回緊張します。

 

さて、お金が欲しいお金が欲しいと叫んでいたら、あれやこれやの臨時収入を得ました(もちろん、副業的なものではなく、保険金の支払とか年末調整とか)。生活のために働いているので、お金が増えることは良きことです。車買いました。

 

本題です。本代はとてもかかりました。

夏の終わりごろ、新規採用職員向けに公用文の書き方及び行政法(行政救済法を除く。)について一日、研修担当所属から依頼があったため、研修を行いました。前者については3回目、後者については初めて担当する機会を得ました。

幸いなことに、夏ごろは繁忙期も終わっており、ほぼ毎日のように研修準備に時間を費やすことができたので、学習時間を確保するとともに、大幅な研修資料の改訂ができました。

 

わたしが依頼されたミッションは、「公的な文章とは何ぞや」というイメージとその技術を教授すること。例えば「!」は公用文として適切か?どのような場面で用いるべきかなど。そして、職員として知っておくべき法的知識の教授。法律による行政の原理を代表とする基本原理を解説すること。

 

それとは別に、わたしが掲げていたミッションは次の三つ

1 とりあえず法規部門担当者の雰囲気を知る。 

  → 相談しやすくする。

2 文章の型を身に付ける。

  → 全員分、事前課題を添削しました。3連休がつぶれました。

3 仕事の根幹を知る。

  → 例えば前例踏襲をするにしても、その都度の検討を忘れない。その仕事の根拠法は何か?

 

1について、法規担当者に相談することができる…そういうことすら仕事で詰まったときに選択肢に出てこないかもしれません。上司は流していても、法的に再検討は重要ってことも少なくない。よく考えてみると、不要なステップが見つかったり。ひとりで仕事を抱え込まないということも大事。新人だからこそ。

もちろん、こんな連中に相談したないわ!と思う人も一定数はいるだろう。ただ、必要な場面で相談する・しなければならないということがある(例えば条例改正・訴訟関係)ということを知ってほしい。

例えば今後、相談に来てくれた時、「これ、研修の時やったよね?覚えてるかな?」と、声かけたりする。そういう指摘があったから、覚えているなんてこともある(忘れる人と嫌がる人がほとんどかもしれないが…)。少なくとも、覚えるべきことは覚える、もっと学びたい人には、刺さるかもしれない。地道にコツコツ

 

2について、100人程度の職員に対して、事前課題を出した。自分の業務について説明してください。根拠条文を示してください、と。3行程度記載する人から、数ページにわたる大作もあった。その全てに目を通し、公用文として通用するものに添削した(ワードの校閲機能を使い、全員にコメントを付し、メールで返却)。私自身、まさに100本ノックで、自分がどのような書き方をどのように直すかの癖も相対化することができた。研修をやると、研修担当が一番勉強になるのだ。

良くあるミスは、公用文としては(私が公私問わず説いている)「手続」が正しい。「仕組み」がただしい。このような送り仮名のミス。もうひとつが、文章として成立しているかどうか、あるいは、語順。

「いつ、どこで、だれが、なにを、どうした」

この語順に気を付けるだけで、文章は格段に読みやすくなる。

「私は、○○業務を担当している。」

「私が担当している業務は、○○である。」

とするのが正しい。

法律番号について、ヒントを出しているにもかかわらず、そのヒントを踏まえない回答がほとんどであった。

地方自治法(昭和22年法律第67号)」が正しく「自治法」でもなく、「自治法(昭和22年法律)」でもなく、「自治法1条」でもないのだ。根拠条文を示してくださいという設問であるから、根拠となる条文を示さなくてはならない。

この点について、しっかり解説したので、今後はどの法律喉の条文が根拠となっているか?都度調べてくれる…と期待している。

と少しきついことも言ったが、この際、多くの職員が、改めて条文を読んでくれたはずである。それでいいんです。それでいいんです。ここからスタートなので。

 

3について、根拠条文については、先に触れたとおり。我々は法治国家で生活し、生きている。憲法が我々に授権しているものと、禁止しているものを理解すること。それが大事。少なくとも、全ての建前は、公共の福祉の増進にあり、常にその目的のために仕事が構成されるように、意識すること。特に我々に課された義務として、法律による行政の原理を徹底的に体に叩き込むこと。説明が成功したかはわからないが、今後は、あの時教授しましたね?との前提で、何度もそこをスタート地点にして相談等に応じる。

 

3年目ということもあり、時間配分は感覚的につかめてきたので、余裕をもって進めることができた。行政法については座学的な要素が多いので、一方的に話すのはほどほどに、職員同士で議論ができる時間を多めに確保した。交流も大事です。同期ですから。

 

目の前の仕事を捌くだけなら、誰でも3年やればそれなりにできるようになる。一つ一つの要素に分解して、読み書きができて、論理的思考が一定程度できるなら、難しい、ということはない。もちろん、調整はその限りでない…

重要なのは、仕事の根拠やその目的を意識して、どの手段が最も効果的であり、有用であり、その手段を実現するためにどのような手続を踏めばよいのか?これを常に考えること。そのための根拠が法であり、法的思考が有用であること。前者については教えることができたが、後者については発展的であり、新規採用職員に対しては高度と思う。管理職向けにやりたいが、なかなかそのような機会はない。いつかやってみたい。

 

研修資料は、各課において復命書に添付され、回覧される。何人かの方から、広く公開してみてはとのご意見もいただいた。嬉しい限り。その予定はないが、公開できる機会があれば、もっとブラッシュアップしてから。来年度もブラッシュアップを、引き続きやってみます。

 

最後に。研修後、研修担当のえらい人から、数十万の委託くらいの価値がある!との言をいただいたので、ぜひ特別手当として支給してくださいと冗談を返しておいた(もちろん本気である。)。研修の内製化が課題らしく、社内での研修担当としてのキャリアを歩みつつある…(資料は作るのが大変なので、安請け合いはしない…)

 

余談

当然、手当はないので、赤字である(?)。書籍代は必要だし、プライベートに読書時間を要する。採点も手間暇かけている。大赤字である(?)。

一方、得るものも多かった。確実に説明できる内容を教える。わからないところは言語化できるまで考え、言語化する。そして、読まなければならない本を読む…圧を掛ける圧を掛ける。私が学んだことこそ財産であり、きっと黒字だ(?)。

課題も多い。行政救済法は触れることができなかった。国賠や取消しに係る訴訟がどんなものか理解すると、法的リスクへの具体的なイメージがつかみやすい。来年は行政救済法を教える予定。また、行政手続法について、具体例があまりにも少なかった。時間も余ってしまった。職種が多様であるから、あえて省いたところもあるが、来年は具体例を充実させたい。また、公用文の自分の癖があることに気付いた。まだこの点について、自覚できていないし、類型化もできていないが、いい意味での無色の公用文を目指していきたい。もっと範囲を増やすなら、契約事務のあれこれを丁寧に教えたいところ。

 

職員が学んでくれると嬉しいし、何かの役に立てればそれでよいと思っている。この企図が成功しているか、今は判断すべき時にはない。精進します。