法務研修はダレのために?

研修は、研修担当者(所属)の自己満足で終わってはいけない。

なぜか。

研修の目的は、業務に必要な考え方、知識、経験などを、職員に対して教授することにより、これらを用いて業務をこなせるように、よりよくできるようにするためであるからだ。研修は手段であり、それ以上でも以下でもない。

 

よくある「役に立たない研修」と呼ばれてしまうものは、2種類あり得るのではないかと考えている。第1に、研修することになっているもの。過去からの「伝統」である。思考停止の産物である。第2に、基礎的な考え方を知るもの。法務研修は、こちらに該当するのではないかと考えている。

もちろん、前者に該当するものも、ある。いかに後者として、つまり、業務の土台となる考え方を知ることのできる研修として構成できるかが、重要であるといえる。

 

法務研修の対象を考えると、次のように分類できるのではないか(あくまでも一つの軸に過ぎない。)。

1 新規採用職員

2 中堅職員

3 管理職

4 法規担当職員

5 事業者又は一般市民

 

5については、性質を異にする。どちらかというと、説明会や市民講座というかたちで提供されるだろう。以下では、1から4までについて議論の射程を絞る。

 

1について、基礎的な事項を知ることが重要になる。業務としても携わっていない、携わって半年くらいなど、実務や経験も乏しい。加えて、OJT重視である場合、体系的な研修を受けていないことも想定される。彼らに対しては、基礎の基礎から享受することが望ましい。物事の見方や考え方など、即効性のあるものは教授しがたい場合でも、学習の基礎となるものを扱うことがかえって重要ではないか。

2について、一定の実務経験を踏み、いくつかの部署を経験していることが想定される。実務経験を踏まえ、それらを整理するかたちで、体系的な知識の整理・構築へと至るように構成するのが望ましい。マネージメント層には至っていないが、後輩がいることも多い。担当レベルでの相互チェックを積極的に推奨したい。それができるように、すべきであることを重視しながら、教授するのが望ましい。

3について、管理職の専決により、事務処理が決することがある。これについて、自身の責任の下、判断していく必要がある。これらの業務を担うがゆえ、本来であれば、下が整えてきた事務について、問題がないか、迅速かつ慎重に判断する必要がある。管理職は、議会や地域の状況、首長の方針などに目敏く反応し、時に抑え、時に上げていく必要がある。その時に重要なのは、必要があれば、下に差し戻し、的確な指示を出すことである。そのために、広範な知識を再確認する必要がある。また、マネージメントが長いと、改正の最先端などに疎くなることがある。これについて、包括的な説明を行うことも、一つではないかと考えるところ。

4について、内部又は外部の研修機会を確保する必要がある。外部にも講座は少なくない。某2週間の研修は必須。内部的には、法規担当職員が少ないため、OJTとならざるをえないだろう。研修というよりも、ノウハウの承継に力点を置くべきかもしれない。

 

これらについて、誰のために?と問われたらば、法務研修に限らず、住民福祉の向上のため、と即答しなければならない。そして、そのために適正な事務執行を行わなくてはならず、適宜、法の規定や案件の性質に応じた判断を、裁量の範疇で、行わなくてはならない。そのために、各種知識は必要である。

個人的には、OJTではなく、一括研修をより重視するべきであり、配属される所属によらず、基礎的事項は全ての職員が最初に学ぶべきと考えている。が、1年目であっても、イチ戦力として換算してしまう弊業界の伝統が存続している限り、なかなか難しいといわざるを得ない。このような事情を踏まえ、業務内外での研鑽が必要であるが、その動機付けはなかなか難しい。少なくとも、それぞれの業務に必要な知識は業務の中で身に付けるべきであるが、業務内外で学習しようとする動機付けを、研修の中で図っていくことも重要だ。私の場合、私が面白いと感じる議論や論点、はたまた知識などを話すようにしている。幾人かでも、共感してもらえるならば、よいとそこは割り切っている。もちろん、万人受けする研修にしたいところであるが…(法務研修は万人受けするか?万人受けする法務研修とは?)